後立山(長野/富山) 白馬岳(2932.3m)、丸山(2768m) 2024年6月29日  カウント:画像読み出し不能

注意:大雪渓はクレバス拡大のため7月4日から通行止めとなりました。開通の見込みは立っていません

所要時間 3:46 猿倉駐車場−−4:08 長走沢−−4:21 林道終点−−4:36 白馬尻(雪渓に乗る)−−5:53 夏道(標高2200m アイゼン脱ぐ) −−6:22 小雪渓トラバース(アイゼン装着)−−6:31 避難小屋−−7:05 村営頂上宿舎−−7:21 白馬山荘−−7:35 白馬岳 7:40−−7:55 標高2810m付近で戻る−−8:15 白馬岳 8:31−−8:43 白馬山荘−−8:52 祖母谷方面分岐−−8:59 丸山−−9:15 2600m鞍部(アイゼン装着) 9:21−−9:33 小雪渓トラバース起点(アイゼン脱ぐ)−−9:54 大雪渓に乗る(標高2200m アイゼン装着) 10:02−−10:32 白馬尻(アイゼン脱ぐ)−−10:43 林道終点−−10:51 長走沢(水浴び) 10:56−−11:13 猿倉駐車場

場所長野県北安曇郡白馬村/富山県下新川郡朝日町
年月日2024年6月29日(土) 日帰り
天候雨後晴
山行種類残雪期の一般登山
交通手段マイカー
駐車場猿倉に駐車場あり
登山道の有無丸山〜杓子岳鞍部から小雪渓まで以外は登山道あり
籔の有無無し
危険個所の有無小雪渓トラバースは歩きやすいよう雪切されているが、雪面そのものは急で万が一滑落したら止められないので注意。2600m鞍部直下の雪渓も急なので滑落注意(6本爪軽アイゼンで滑落して岩に当たってお尻を擦り剥いた(汗))
山頂の展望いずれの山頂も晴れれば大展望
残雪装備6本爪軽アイゼン、ストック、ロングスパッツ(ハイカットの靴なら無くても可)
GPSトラックログ
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コメントシロウマオウギが咲いたとの情報で白馬岳へ。天気予報では土曜朝から急激に回復するとのことだったが、出発時は雨で傘を差して歩いていたら雨が止み、稜線の雲が急激に取れて本当に晴れてくれた。大雪渓は谷全体を横断するような長いクラックが何本も走っており、今は間隔が狭いので歩いて跨ぎ越せるが、幅が広くなるとそのうち通行止めになる可能性あり。標高2200mで葱平の尾根に乗って雪切された小雪渓トラバース入口まで夏道を歩く。小雪渓トラバース後も多少の残雪があるが傾斜が緩くアイゼン不要だった。前回に引き続いて今回も山頂でであった人は皆無だったが、小雪渓入口〜大雪渓では50人くらいとすれ違った。高山植物の開花は進んで稜線はオヤマノエンドウ、ミヤマキンバイ、ハクサンイチゲがピークを迎えていた。ツクモグサは山頂より南側はほぼ終わりで北側が花盛りだった。目的のシロウマオウギは葱平で多数見ることができ大感激。シロウマアサツキはまだ花が開いていなかった

葱平で咲いていたシロウマオウギ。花の色が純白で根元に黒い毛があるのが特徴。
他にタイツリオウギも咲いていて県境稜線ではリシリオウギも発見! 最も数が多いイワオウギはまだ咲いていなかった



見かけた花と開花状況

花の種類

開花状況等

ニガナ  林道で見かけた。数が少なく開花状況は不明 
ヤグルマソウ  林道で見かけた。花盛りだが華やかさが無い花 
テングクワガタ  花盛り。林道脇で見かけた。名前の通りミヤマクワガタはヒメクワガタに似た花 
ズダヤクシュ  ほぼ終わり。林道終点〜白馬尻でたくさん見られた 
モミジカラマツ  咲き始め。林道終点〜白馬尻で見た
ミヤマタネツケバナ  数が少ないので開花状況は不明。林道終点〜葱平で見た
タニウツギ  場所により咲き始め〜花盛り。今は林道終点〜白馬尻が花盛り
オオバミゾホオズキ  花盛り。林道〜白馬尻で多く見られた
ミヤマカラマツ  林道〜白馬尻や葱平で見た。まだ数が少ないので咲き始めか 
シラネアオイ  大雪渓沿いでポツポツ咲いているが数が少ないので目立たない 
ニリンソウ  白馬尻の少し下で花盛りだが、他ではおしまい 
キヌガサソウ  大雪渓下部で花盛り 
サンカヨウ  大雪渓下部で花盛り 
オオサクラソウ  大雪渓中部で花盛り。大雪渓下部は終わったものが多い 
オオバキスミレ  大雪渓下部で見たが数が少ない。もう終わりか? 
ミヤマキンポウゲ  大雪渓上部〜頂上宿舎付近で咲いているが葱平が開花のピーク 
カラマツソウ  咲き始め 
ハクサンフウロ  咲き始め。葱平で1株だけ咲いているのを見た
クルマユリ  まだ蕾 
シロウマアサツキ  まだ蕾。葱平でしか見られない 
シロウマオウギ  葱平では花盛り。白馬山荘ではまだ 
タイツリオウギ  花盛り。葱平でのみ見かけた
リシリオウギ  咲き始め。丸山〜2600m鞍部間の稜線で数株の群生を見ただけ 
ウメハタザオ  終わりが近い。葱平で目撃 
ミヤマタネツケバナ  数が少ないので開花状況は不明
ハクサンチドリ  数が少ないので開花状況は不明。葱平と2600m鞍部で見た 
シナノキンバイ  場所によって開花状況はまちまち。まだしばらく楽しめそう 
ミヤマクワガタ  咲き始めかな。葱平と2600m鞍部近くで見た 
ハクサンイチゲ  花盛り。葱平〜山頂まで広範囲で花盛り 
ミヤマオダマキ  咲き始め 
ミヤマキンバイ  稜線では花盛り。葱平ではほぼおしまい 
ヤマガラシ  花盛り。葱平〜頂上宿舎間で見られる 
ウルップソウ  稜線は終わりが近いが避難小屋〜頂上宿舎は花盛り 
イワベンケイ  花盛り 
ミヤマシオガマ  咲き始め〜花盛り。主に稜線で見られる。タカネシオガマはまだ咲いていなかった 
オヤマノエンドウ  花盛り。稜線上で一番多く咲いている 
ミヤマダイコンソウ  咲き始め 
コイワカガミ  咲き始めかなぁ。数が少ないので判断に迷う 
キバナシャクナゲ  終わりに近い 
タカネヤハズハハコ  咲き始め 
シコタンソウ  まだ蕾 
チシマアマナ  花盛り。山頂付近でのみ見られる 
イワウメ  咲き始め〜花盛り。山頂より北側でしか見られない 
ツクモグサ  花盛り〜おしまい。山頂より南はほぼ終わりで北側で花盛り 
クモマスミレ  少なすぎて開花状況の判断ができない 
ミツバオウレン  花盛り。丸山南側でしか見なかった 


猿倉駐車場。写真の白点は雨粒で出発時は雨が降っていた 長走沢。この頃には雨は止んでいた
林道終点 3週間前はこの沢から雪渓に乗った
白馬尻。今回はここで雪渓に乗る 白馬尻から上流を見ている。明るい時間に雪渓を登るのは久しぶり
標高1730m付近 標高1820m付近のクラック。両岸まで達するほど長い
標高1830m付近のクラック。他にもありこれほど多い年は初めて 標高1850m付近
右岸の標高1900m付近のシラネアオイ 右岸の標高1900m付近のオオサクラソウ
右岸の標高1900m付近のショウジョウバカマ 標高2000m付近。中州あり
標高2180m付近。夏道入口は間近 振り返る。後ろに人影は無し
標高2200m付近で葱平の夏道に乗る ハクサンチドリ
ミヤマキンポウゲはお花畑状態 ミヤマカラマツ
シロウマオウギの花。これが見られただけで満足 シロウマオウギの株
ミヤマクワガタ ハクサンイチゲ。葱平ではもう終わりに近い
今年初のミヤマオダマキキ タイツリオウギ
葱平のミヤマキンバイはそろそろおしまい 標高2300m付近
おそらくウメハタザオ シロウマアサツキはまだ蕾
シナノキンバイ。葱平では終わりに近い おそらくミヤマタネツケバナ
ヤマガラシ 標高2400m付近の小雪渓トラバース入口。雪切済
標高2400m付近から見た2600m鞍部。まだ雪がつながっている 越後三山の越後駒ヶ岳と中ノ岳
避難小屋。もう開いていた 標高2480m付近。雪が緩んでいてアイゼン不要
標高2530m付近 標高2560m付近の大岩で幕営3人組を追い越す
標高2610m付近 標高2650m付近。ウルップソウが花盛り
標高2660m付近の短い残雪 イワベンケイ
ミヤマオダマキ シコタンソウはまだ蕾
ミヤマシオガマ ハクサンイチゲ、ウルップソウのお花畑
水場はもう雪から出ていた 村営頂上宿舎。既に営業を開始している
オヤマノエンドウ。3週間前と変わらず咲いていた オヤマノエンドウの群落
県境稜線から見た白馬岳 旭岳
コイワカガミ ミヤマダイコンソウは咲き始め
白馬山荘付近のシロウマオウギ 白馬山荘。昨日は雨だったので人が少ない
山頂向けて最後の登り 今年初のタカネヤハズハハコ
無人の白馬岳山頂 白馬岳から見た南側。早くも信州側からガスが上がり始める
白馬岳から見た南〜西〜北の展望(クリックで拡大)。東側はガスが上がって真っ白だったので撮影せず
白馬岳から見た富山湾方面。今日は海岸線がはっきり見えた 白馬岳から見た後立山北端の山々
白馬岳から見た黒部川河口付近 白馬岳から見た入善付近
チシマアマナ イワウメ。山頂の北側でしか見られない
チングルマと雪渓 イワベンケイ
ツクモグサ。山頂の北側で盛りだった 標高2800m付近から見た朝日岳方面
標高2800m付近でUターン 標高2800m付近から見た小蓮華山
標高2820m付近から見た2850m肩 ミヤマシオガマ
標高2850m付近 標高2890m付近
白馬岳山頂再び 白馬岳から見た剱岳
白馬岳から見た火力発電所2箇所 白馬岳から見た伏木万葉大橋(小矢部川)
白馬岳から見た入善沖の洋上風力発電施設 白馬岳から見た糸魚川市街地
下山開始 山頂一帯はハクサンイチゲが花盛り
ミヤマキンバイ クモマスミレ。白馬岳では少数派
お花畑 白馬山荘
まだ人の姿が無い テント場には往路で追い越した3人組が設営中
稜線のウルップソウは終わりに近い 丸山山頂
丸山を越えてもウルップソウが多い 唯一見かけたリシリオウギ。花の根元の毛が少ない
キバナシャクナゲは終わりに近い ミツバオウレンは1箇所でしか見られなかった
短い残雪を横断 ミヤマキンバイ、ウルップソウ、ハクサンイチゲ、
オヤマノエンドウのお花畑
ミヤマクワガタ 2600m鞍部
2600m鞍部のハクサンチドリ 2600m鞍部から雪渓に乗る
標高2520m付近から振り返る 標高2520m付近から下流方面
標高2500m付近。小雪渓に寄り過ぎたため右に進路変更 雪と地面の境界を下るのが正解だった
標高2410m付近。小雪渓トラバースが見えた 標高2410m付近。このまま雪が無い場所を下る
小雪渓トラバース入口に到着 3週間前の古いトレースを上がる登山者
クルマユリの蕾 ハクサンフウロ
カラマツソウ 葱平夏道末端(標高2200m)
葱平夏道末端から見上げる 大雪渓に乗る
標高1980m付近 標高1970m付近の左岸はミヤマキンポウゲのお花畑
標高1940m付近 標高1820m付近
標高1820m付近のクレバス。深さは不明 標高1770m付近
キヌガサソウ オオバキスミレ
サンカヨウ ニリンソウ
シラネアオイ 標高1600m付近
白馬尻 白馬尻で夏道に乗る
ニリンソウの群落 タニウツギ
ミヤマカラマツ オオバミゾホオズキ
ズダヤクシュの花はほぼ終わり ミヤマタネツケバナっぽい
林道終点。晴れて暑い! 長走沢で水浴び
稜線は雲に覆われている ヤグルマソウ
林道脇のテングクワガタ テングクワガタの群落
ニガナ 猿倉駐車場到着


 今年は天気の巡り合わせが良く週末の土曜日に晴が来ることがほとんどだったが、今週末に限ってはダメっぽい。西から梅雨前線が接近して土曜日は雨で日曜日に回復の予報。久しぶりに日曜日に出かけるかと考えていたが、金曜日になって予報が前にずれて土曜日の午前中に急激に回復するとのこと。ただし午前9時くらいが雨と晴の境界で、私のいつものパターン夜間登山では下山まで雨に降られることになりそうなので、久しぶりに出発を遅くして対応することにした。

 行先であるが、梅雨前線は日本海から日本の南岸へ下がっていくので天気の回復は日本海に近い側ほど早い。そこで高山植物の開花状況を考慮して白馬岳に決定。ネットの情報では先週にシロウマオウギが開花したとのことで、今回はこれが主目的だ。まだツクモグサも咲いているとのことだし、ウルップソウも咲いている。高山植物の開花は今年は少し早いようなので、まだ6月と言ってもかなり咲き揃っているだろう。

 前日の金曜日は雨だったので金曜夜の猿倉駐車場はガラガラで駐車は20台弱程度。長時間日影になる林道入口に一番近い区画を確保。金曜夕方の天気予報では雨は日付が変わる頃に止むものと土曜日昼頃まで降る予報もあり、どちらが正解なのか判断が付かないので雨装備はしっかりすることにして、傘と防水性能がまだ劣化していない下界用のカッパを持つことにした(ちょっと重い)。ザックやウェストポーチの中が濡れないよう物品はビニール袋に入れておく。雨でも気温は高めの予報なので、防寒着は先週同様減らしておく。もし雨だったら着替えることすらできないだろうし。一方でもし下山時に晴れると暑くなるので暑さ対策グッズも持つことに。

 残雪装備であるが、ネットの情報収取で小雪渓は雪切されたとのことで軽アイゼンで問題なしと判断してピッケルは持たずにストックとし、6本爪軽アイゼンを持つことにした。

 酒を飲んで寝たが夜はずっと雨が降っていて日付が変わっても雨は止むことがなかった。当初予定では午前2時過ぎに起床して午前3時に出発を計画していたが、午前2時は雨が降っていてテンションダウンのため2度寝に入って午前3時に起床。この時点でもまだ雨が降っていたが1時間前よりも弱まっていた。午前4時前に出発するときにはまだ雨が降っていたので、足元はロングスパッツで固めて傘を差して出発した。

 車の外に出ると思ったよりは雨は弱く、傘を差さなくても濡れることはなさそうだったがしばらく傘を差して歩き、林道歩きの途中で完全に雨が止んで傘を収納した。良かったぁ。ただし県境稜線と西側の富山県は遅くまで雨が降る予報だったので、これから標高を上げていって天気が悪化しないかが心配だ。しかし周囲が明るくなって空が見えるようになると雲の隙間から青空も見えるではないか! 思ったよりも雲は薄いようだが、稜線の方向はまだ雲が覆っていて見ることはできなかった。しかし時間経過と共に雲の底が高くなってきて雪渓が見えるようになり、小蓮華山も顔を出すようになって急激に青空が広がった。白馬尻に到着する頃にはすっかり晴れ上がり、これなら出発を1時間早めても良かったとちょっと後悔。長走沢や林道上を流れる沢の水量は通常と同じ程度だったので、昨日までの雨量は大したことがなかったようだ。登山道が沢のようになっている箇所は無かった。

 今回は白馬尻で雪渓に乗った。3週間前には全く見えなかった建物が雪の上に出ていた。まだトイレは設営されていないし、テント場は雪の下のままだ。

 雪渓を明るい時間帯に登るのは久しぶりで、ルートや落石が見えるのは有り難い。ある程度まで高度を上げるとベンガラやロープでルートが表示されていた。傾斜が緩い区間はアイゼン無しのままで雪渓を上がっていく。軽アイゼンとは言え足に付けると重りになって疲労が増すので、アイゼンが無くて滑るのを防止するような雪上歩行で妙な場所の筋肉が疲労するのとどちらが損かを考えながらアイゼン装着のタイミングを計る。雪面は小さなスプーンカットができつつあるので、思ったよりも滑らずに済んだ。

 大雪渓には複数のクラックが端から端まで横断するような長距離を走っていたが、こんなことは初めてである。今はクラックの幅はせいぜい50cm程度なので簡単に跨ぎ越すことができるが、時期が進んで幅が広がったら右岸の秋道で高巻が必要になるだろう。おっと、その頃に秋道が出ているとは限らないか。その場合、もし安全にクラックを越えられる場所が無かったら秋を待たずに通行止めになるかもしれない。

 傾斜が一時的に急になって傾斜が緩む肩のような場所から下流を振り返ったが、人の姿はまだ無かった。普通の週末ならこの時間はそれなりの人数が歩いているはずだが、出発時は雨が降っていたので私と同じく出発を遅らせた人がほとんどだったようだ。

 3週間前には大雪渓の下部左岸でシラネアオイやオオサクラソウが咲いていたが、今は標高1900m付近の右岸で咲いていた。左岸側では標高1970m付近でミヤマキンポウゲの黄色い群落が見えていた。

 大雪渓から夏道に乗る地点(葱平の尾根末端)は標高2200m付近だが、この付近は雪渓が割れ始めていてそのうちに左岸側の高巻きが必要になりそうだ。ここでこんな危険な割れ方を見たのは初めてで、今年の降雪量の少なさ、雪解けの早さが原因かな。葱平の尾根末端に取り付いてアイゼンを脱ぐ。ここから小雪渓トラバース入口までは雪は無いはずだ。

 葱平はミヤマキンポウゲが早くも花盛り。ここは例年なら8月に入ってもミヤマキンポウゲが咲いているので、かなり長い間咲いていることになる。当然ながら同じ花が延々と咲き続けているわけではなく、次から次へと花が咲くのだろう。目的のシロウマオウギは葱平で発見。昨年もほぼ同時期にここを歩いているが気付かなかった。今はイワオウギはまだ咲いておらず、シロウマオウギは目立つ存在だ。どうもシロウマオウギの方が開花時期が早いらしい。近くにはタイツリオウギも咲いていて、これもイワオウギより開花は早いらしい。

 葱平では他にハクサンチドリ、ミヤマカラマツ、ミヤマクワガタ、ハクサンイチゲ、ミヤマオダマキ、ミヤマキンバイ、シナノキンバイ、ウメハタザオ、ミヤマタネツケバナ、ヤマガラシなどが見られた。ここではハクサンイチゲ、ミヤマキンバイ、シナノキンバイは既に終盤であった。

 標高2360m付近で3週間前に小雪渓に取り付いた地点に達すると今でもトレースが残っているが、雪解けが進んで夏道がまだ先に続いているのでこのまま直進。白馬山荘のHPでも夏道と同じルートを通るように書かれていた。夏道には目印に緑色のロープが張ってあるし、岩には古いペイントがある。標高2400mで見覚えのある大きな岩が登場し、夏道はここで右に曲がって小雪渓をトラバースする。小雪渓はまだ雪に覆われているが情報通り雪切されて足元は水平になっているので安全に通過できそうだ。でも万が一ここで滑ったらピッケル無しでは止められないし、その場合は死に至る可能性が高いので軽アイゼンを装着。大岩の根元には「アイゼン必着」の看板が出ていた。

 トラバースに入ると雪は緩んでアイゼン無しでも行けそうであったが、用心するに越したことはない。今回はストックなのでピッケルとは逆に谷側に突いて体が谷側に傾かないようにした。意外にも雪の上には新しいアイゼン跡があり、どうも先行者がいるようだ。大雪渓を歩いている時に先行者の姿は全く見えなかったので、おそらく1時間以上の時間差があると思われる。例年通りトラバースの途中にはすれ違い用のスペースあり。対岸の夏道に到着して軽アイゼンを脱いでザックへ。この先にまだ雪が残った区間があると思うが、傾斜が緩いし雪が緩んでいるのでアイゼン無しで問題ないだろう。

 少し登ると避難小屋が登場。前回はまだ雪囲いされて入ることができなかったが、今は雪囲いは外されて周囲の雪はすっかり消えていた。小屋の横を流れる雪解け水の量は多かった。振り返ると東の地平線は広大な雲海に覆われて志賀高原の山々や浅間山、八ヶ岳、富士山、南アルプスは見えなかった。梅雨前線が南下して関東の天気回復は遅れていて、千葉では大雨が降っているとラジオで伝えていたので雲が多いのも納得だ。でも北の方は雲が低くて越後三山の中ノ岳と越後駒ヶ岳はすっきりと見えて空気の透明度は良好だ。しかし東側からは早くもガスが上がり始めていて、稜線到着時に展望が得られるのかちょっと心配だ。

 避難小屋〜頂上宿舎間は例年だと広大なお花畑になるが、まだ時期が早く咲いているのはミヤマキンポウゲ、ミヤマキンバイ、ヤマガラシ、ウルップソウ、ハクサンイチゲであった。ミヤマキンポウゲは葱平では花盛りだったがこちらではまだ咲き始めで、逆に葱平で終わりかけのミヤマキンバイはここでは花盛りだった。ここもイワオウギが多く見られる場所だが今は全く咲いていなかった、というか葉っぱさえ出ていなかった。

 標高2550m付近の大岩で大ザックの3人組が小休止中。もしかしたら下りかと思ったら登りで、アイゼン跡の主であった。足跡からおそらく複数と思っていたが3人とは思わなかった。かなりの時間差があったはずだが、あちらは幕営装備と思われる大ザックに対してこちらは軽い日帰り装備なのでスピード差があって当然だ。これで本日の先頭に立ったようで、この先の雪の上には新しい足跡は無かった。

 村営頂上宿舎が近付くとミヤマオダマキが登場。例年、ここには群落が登場するが今年も健在。岩に張り付いたシコタンソウも毎年同じ位置に出てくるが、今年も同じ位置に芽を出していた。蕾が付いていたが開花はまだだった。ミヤマシオガマは咲き始めであった。ここで満開状態はハクサンイチゲにウルップソウだ。

 村営頂上宿舎の雪渓根元の水場は既に雪が消えて出ており水の補給が可能だった。村営頂上宿舎は3週間前はまだ雪囲いされて無人だったが、今は雪囲いは外されて営業の案内看板も出ており、既に営業が始まっているようだ。ただし今は外に人の姿はなし。昨日は雨だったので入山者が少なかったのだろう。小屋の前は水源となる雪渓がまだ多く残っているのでお花畑はまだ雪の下だった。ここは例年だと遅くまで雪が残ってお盆でもまだウルップソウが見られる珍しい場所だ。

 県境稜線に出ると西〜南の展望が開けて立山、剱岳が目に入るが雲が多く、立山より南側の山々は雲が絡んで見えなかった。今日は白馬岳を選択して正解だった。後立山は赤沢岳付近が晴れの南限であった。

 稜線に出ても人の姿は皆無。ここではオヤマノエンドウとミヤマキンバイ、ウルップソウが主役だが、3週間前は咲き始めだったウルップソウは今は終盤であった。ツクモグサはほぼおしまいで数株が見られるのみだった。ミヤマダイコンソウはまだ咲き始めだった。

 白馬山荘近くでは毎年同じ場所でシロウマオウギが咲くのだが、小屋のすぐ南側直下では咲き始めのシロウマオウギを発見。帰りに小屋の東側でシロウマオウギが見られる箇所を通ったが、こちらはまだであった。

 白馬山荘も外は無人で週末とは思えない光景だ。3週間前は小屋の裏側は雪が残っていたが、今はすっかり消えていた。小屋より上部の西側斜面にはもう雪は無く、ハクサンイチゲ、ウルップソウ、ミヤマキンバイを中心とするお花畑が広がっていた。ここまで上がるとチシマアナマの小さな花が見られるようになる。稜線東側で雪が溶けた斜面でもハクサンイチゲが中心で、今年初のタカネヤハズハハコを発見。こちらはまだまだこれからだ。

 無人の登山道を登りきると無人の白馬岳山頂に到着。信州側はガスが上がって視界を塞いでいるが西側は晴れたままで、今回は白山が見えていた。富山湾の海岸線が非常にくっきり見えていて、海岸線の大きな構造物はデジカメのズームをいっぱいにするとはっきりと写っていた。もしかしたら佐渡が見えるかと思ったが残念ながら見えなかったが、糸魚川市街地は見ることができた。

 まだ時間も体力も余裕があるので、山頂から北側に下ってこれまでと違う花が咲いていないか探してみることに。ザックをデポして少しの防寒着だけを持って空身で北へ下っていくとミヤマシオガマが登場。山頂より南側でも見られるが登山道近くで咲いている株は少なかった。イワウメは山頂南側では全く見ることができないが北側では多く見られる。そして南側ではほぼ終わっていたツクモグサが北側では今が盛りと咲き誇っていた。こちらでは縦走路のすぐ横にたくさん咲いているので写真撮影にちょうどいい。

 標高2800m付近まで下ると稜線東側直下には時期によってはミヤマアズマギクなど山頂南側では見られない花が咲いているのだが、今回はまだ雪解け直後らしく花は全く咲いていなかった。これ以上進んでも新しい花は期待できないのでここでUターン。

 山頂に戻るとまだ無人。小休止して珍しく良く見えている富山湾岸の写真撮影。肉眼では見えないが、デジカメでズームすると小矢部川にかかる伏木万葉大橋や2つある火力発電所、入善沖の洋上風力発電施設などが確認できた。糸魚川の海岸線も見通すことができた。

 休憩を終えて下山開始時点でも山頂は無人のままで、3週間前と同じ状況であった。この後に登山者に出会ったのは県境稜線で祖母谷温泉/大雪渓分岐の十字路であった。帰りは稜線東側の崖っぷちの道を下ったが、3週間前にたくさん咲いていたツクモグサはきれいさっぱり無くなっていて、発見できたのは数株だけだった。今はハクサンイチゲが一番幅を利かせてお花畑を形成していた。

 帰りは3週間前と同様に丸山〜杓子岳間の2600m鞍部から残雪を利用して葱平へ直接下るルートを取ることにし、白馬山荘を通過して頂上宿舎を掠めて南下する。テント場には往路で追い越した3人組がテント設営中であった。昔はこのくらいの人数ならパーティーでテント1張が普通であったが、今は個人別でテントを張るのが普通だ。学校のサークル活動でもない限りはそうだろうなぁ。

 丸山に上がって写真撮影して2600m鞍部へ向かう。ウルップソウがたくさん見られるがもう終盤だ。ここでもハクサンイチゲ、オヤマノエンドウ、ミヤマキンポウゲがお花畑の主役であった。今でこれほど咲いているとなると7月中旬にはお花畑は終わってしまうのではなかろうか。短い残雪には下り方向の一人の足跡があったが、おそらく白馬三山縦走だろう。

 他で見られず丸山〜2600m鞍部間でのみ咲いていた花はミツバオウレンとリシリオウギだった。ミツバオウレンは他の北アルプスの山ではよく見かける花だが、白馬岳ではごく一部でしか咲いていなかった。リシリオウギは初めて見る花で、シロウマオウギやタイツリオウギと同じくイワオウギの仲間だ。花の色はイワオウギやタイツリオウギと同じくクリーム色で花の付き方(並び方)はタイツリオウギと同じなのでタイツリオウギと見分けが難しいが、ネット検索によるとリシリオウギは花の根元の毛が少なくてツルっとした質感とのこと。また、がくの突起が突起状ではなく三角形に近いとのこと。今回見たのはこれらの特徴に該当するのでリシリオウギに間違いないだろう。

 2600m鞍部で軽アイゼンを付けてストックを出す。往路では2600m鞍部〜小雪渓トラバース入口間は往路の登りで使うか復路の下りで使うか少し悩んだ。このルートの最大のリスクは鞍部直下の雪壁であり、今回は6本爪軽アイゼンにピッケル無しであることを考えると安全上は登りで使う方がいい。しかしおそらく下りで使う時間帯は日が高くなって雪が緩み、アイゼン無しでも下れるくらいの雪質になると想定されること、正式登山道を下る時間帯はそれなりに登りの人がいて静かに歩けないことを考慮して下りで使うことにしたのだった。案の定、この時期にこちらのルートを歩く人はほとんどいなかった。

 雪に乗って雪壁を下り始めるが、さすがに6本爪では爪が短くグリップが効きにくい。こういう時はバックで直線的に下るのが鉄則だが、雪が適度に緩んでいたので10本爪のつもりで3週間前と同じく左斜めにトラバース気味に下っていったら見事に滑った。滑ったらマジでヤバい箇所ならバックで攻めるのだが、もし滑っても短距離で傾斜が緩んでカール状の底で止まるのでまあいいかとの油断があった。

 一度滑り始めると6本爪軽アイゼンでは止めることができず、反射的に雪面に体の正面を向けたまでは良かったが、ストックを雪に深く突き刺したいと思っても滑っている最中は難しかった。指を雪面に立てて止めようとしたが止まらなかったが、それなりに摩擦が効いているのである程度以上はスピードが上がることはなく、ちょうど真下にあった岩にお尻から衝突。別の場所なら砂利だったので運が悪かったと言えるかな。結果的にはお尻を打って打撲と擦り剥きの怪我で済んだが、岩への当たり方によっては捻挫も考えられたのでこの点は運が良かったと言っていいだろう。

 お尻なので外部から怪我が見えないのは有り難かったが、日常生活で座るときに痛むのには困った。特に翌日の日曜日は座った時の痛みが酷く、PCの前に座って山行記録を打ち込むのはつらかった。おそらく打撲が痛みの主原因だったと思うが、この滑落よりも大雪渓下部で花探しをしている時にコケて岩の上で尻餅をついた時の方が劇的に痛みが増したため、打撲はこの時のものと考えていいだろう。お尻の痛みが日常生活で支障がないくらいに軽減したのは火曜日になってからであった。

 滑落を止めてくれた岩の左を巻いて急傾斜区間を抜けるとカールの底のような地形で、雪が消えて砂利が出た部分との境界を左へと下っていき、標高2500m付近で雪が大きく消えた部分に乗る。このまま小雪渓トラバース入口まで無雪区間が続くと思いきや、再び傾斜が増すと両方から雪渓に挟まれた小さな尾根地形で、ここから再び雪に乗ると判明。雪渓を挟んだすぐ左手に避難小屋を発見し、思ったよりもルートが左にずれていた。よって岩の右側の雪渓を下ることにしたが、いやらしいことに雪面にはいくつものクラックが走って波打っている。ただし雪渓全面に達しているわけではないので大丈夫そうだ。

 岩の基部は少し急だったが波打った雪渓はさほど傾斜は無いので軽アイゼンでも大丈夫。雪に乗りクレバスに沿って横に移動。大雪渓のクレバスは幅は狭いが深かったが、ここのクレバスは幅は広いが浅くて上に乗っても問題なさそうだ。実際に最後の一つはクレバスを横断したが底も固くて大丈夫だった。少し下ると左手に小雪渓トラバース区間を登っている登山者の姿を発見。ここで雪が切れてアイゼンを脱いで無雪地帯を少し下ると小雪渓トラバース入口だった。ここからは大雪渓まで夏道の下りである。

 ところが見えている登りの登山者全員が夏道ではなく左側(北側)の雪渓を登ってきている。これは3週間前のルートであり、傾斜が急で滑ったらピッケルが無いと止めるのは不可能である。実は先週、ここで滑落による死者が出ている。滑落死亡事故は私が3週間前に登った後なので既に葱平から続く夏道が出ていたが、そこを歩かずに隣の急な雪渓を登っていたのだ。3週間前もそうだったが、急な雪渓にトレースができていて何も考えずにそれを進んでしまう人がほとんどだった。でもここはマヤクボ沢かそれ以上の傾斜があり、登りでもピッケル無しで通過するのは無謀である。夏道が出ているのならそちらを歩くのが当然だが、初めてこのルートを歩く人では雪渓に挟まれた尾根に夏道があるとは知らないのかもしれない。でも白馬山荘のHPに最新情報が出ているので、これを読めば分かりそうなものだが。なお、今回は葱平北側の小雪渓に続く雪渓下部で雪が途切れていたので、他の登山者も葱平の夏道を上がってきていた。

 夏道に乗って花の写真を撮影しつつ下っていくが、夏山シーズンと違ってすれ違う人は少ない。白馬尻までですれ違った合計は50人に満たなかったと思う。シーズン中ならこの10倍いても不思議ではない。大雪渓に乗る前の葱平ですれ違った人には、途中のトレースで雪に乗らずに緑のロープが延びた雪が無い地帯を大岩が出るまで登るように伝えた。

 標高2200mで大雪渓に乗るポイント到着。トレランと思われる軽装の男性2名が上がってきてチェーンスパイクを脱ぐところだった。私はチェーンスパイクは使ったことが無いので分からないが、あれは凍った場所や固く締まった雪には効果的でも少し緩んだ雪では効きにくいイメージがある。こんな場面では歯の長さがグリップを決める要因だからだ。でも大雪渓の傾斜なら大きな問題はないかな。

 大雪渓を下っていくと標高2000m付近の「中州」で休憩中の人が10人くらいいたが、あそこは落石の危険があるので要注意箇所だ。杓子尾根側では頻繁に砂利が崩れるような落石の音が聞こえていた。大雪渓まで落ちてくる石は少ないが注意が必要だ。

 少し下って右岸側の花を探しながら下っていくが、往路で撮影した場所が花が最も多いようであった。大雪渓下部では左岸でもシラネアオイ、オオサクラソウ、サンカヨウ等が見られた。白馬尻付近ではまだニリンソウが咲いていたが、もう最終盤だろう。サンカヨウ、キヌガサソウは花盛りだった。白馬尻近くまで下ると晴れ間が出てきて一気に暑くなった。

 白馬尻でアイゼンを脱いで夏道へ移行。登山者ではなく散策目的と思われる老夫婦がゆっくりと下っていたので先行させてもらう。林道までの間ではオオバミゾホオズキが花盛り。ズダヤクシュは花はほぼ終わって種を付けていた。こんな場所でもミヤマカラマツが咲いていた。なお、ミヤマカラマツとカラマツソウではミヤマカラマツの方が高い場所で咲いているかと言えばそんなことはなく、どちらも同じような場所で咲いている。

 林道に出ると晴れて暑い! 確実に気温が上がっているのが体感できるほど。麦藁帽子で日差しをシャットアウトし扇で扇ぎながら林道歩き。長走沢で顔を洗って日焼け止めを洗い流し(汗で落ちないようになっているので完全には落とし切れないが)、濡れタオルで全身の汗を拭き取ってさっぱり! 下界では晴れてい暑いが稜線は雲に覆われていた。いや、正確には稜線と林道の間に雲があり、稜線にガスがかかっているかはここからでは判断できないか。

 林道脇では大きな葉のヤグルマソウの花が多く見られた。丈が低く小さな花で目立たないが、薄い青色のテングクワガタは今年も咲いていた。久しぶりに見る花で名前を忘れていた。猿倉分岐を見送ってそのまま林道を下ると最後にニガナが登場。

 猿倉駐車場は3週間前よりももっと車が少なく、車の入りは6割程度だった。この時期のこの天気でこの少なさは初めてかもしれない。まあ、天気予報では明け方まで雨になっていたはずで、明日も雨の予報なので諦めた人が多かったのかも。


 短距離で危険が少ない場所であったが、今回初めて滑落と呼べるくらいの経験をした。やはり傾斜が急な雪面ではピッケル無しでは止めるのは難しいと良く分かった。あれは避けられた滑落であり、気を抜いたのが最大の要因だろう。今後は気を付けたい。

 体力の面では3週間前は避難小屋を通過して以降はヘロヘロだったが、今回は山頂に到着してもかなり余裕があり、例年通りの体力に完全回復したと見て良さそうだ。新型コロナ罹患から約3ヵ月も経過していて「リハビリ」に結構な時間がかかった。大型連休以降は毎週北アルプスに登ってこの結果だったが、ただ単に時間経過を待っても同じ結果が得られたのかちょっと興味がある。新型コロナは世の中から無くなることはなく、感染力が非常に強いのでインフルエンザ以上に流行の波が毎年、いや、もっと短いサイクルでやってくるだろう。次に感染した時に今回同様の後遺症が出るのはイヤだなぁ。

 

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